人生100年時代に向けた働き方を考える

2021/12/24

転職ノウハウ 教育関連 お役立ち情報 コラム

先進国は長寿化が進み、「人生100年時代」を迎えようとしています。
特に日本は世界一の長寿国であり、少子高齢化により労働人口の減少が問題となっています。
また、働く期間の長期化が具体化してきた今、働き方についての考え方も大きく変化しようとしています。
私達は今後、どのように働いていけばよいのでしょうか?

【目次】

人生100年時代とは?

人生100年時代の提唱

「人生100年時代」は、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』という著書の中で提唱した言葉です。

世界中で長寿化が進み、先進国においては、2007年生まれの2人に1人が103歳まで生きると言われています。

今後は100年生きることを前提とした人生設計が必要となり、これまでの「教育・仕事・老後」という3つのステージに括られてきた人生設計からの転換が求められています。

マルチステージ化する人生

「教育・仕事・老後」の3ステージでは、0歳~20歳前後までを教育、20歳~60歳前後までを仕事、60歳~80歳前後を老後とする人生設計でした。

これからの人生100年時代では、20歳~80歳前後が仕事の期間として想定されており、マルチステージとして、様々な経験やキャリアを持つ生き方が提唱されています。

例えば、社会人になってからの学び直し、会社などの組織にとらわれない働き方、ボランティア活動などがマルチステージにおけるキャリアとして挙げられます。

その時代の状況に応じ、常にステージを変え、新しい知識やスキルの習得を行い続けるという柔軟性が求められるようになるわけです。

人生100年時代、今までと何が変わる?

教育の変化

人生100年時代、子ども達も激動の変化に対応していかなくてはなりません。
折しも、コロナ禍においてオンライン教育整備の必要に迫られたことが記憶に新しいですが、教育機関における情報通信技術(ICT)の活用は今や必須となりました。

2019年、文部科学省の「GIGAスクール構想」において、最先端のICT教育を取り入れ、子どもだけでなく教員のICT活用指導力の向上を図るという施策が打ち出されています。

集団教育から個別最適化された教育へと変化させ、全ての子ども達が学ぶ機会を得られる環境づくりと、子どもの能力に合わせた学習環境の提供を行うことが目標です。

また、人生100年時代では、長く活躍できる人材となるべく、大人になってからも常に学び直しを行い、知識のアップデートやスキルアップを行う必要が出てきました。

今後、教育も一生涯受けていくという認識が広まっていくことでしょう。

働き方の変化

人生100年時代における働き方の変化としては、まず「60歳定年」という概念がなくなります。

100歳まで生きると仮定し、80歳まで働くとすれば、これまでの60歳定年から20年も長く働く必要があり、国の財政としても「60歳以降は年金生活」というのは既に現実的ではなくなっています。

また、企業は短期サイクルで事業内容の変革が求められ、中には短命化する企業が出てくることが考えられています。
それに従い、労働者も生涯1つの組織だけで働くということがなくなり、フィールドやステージを変えながら働くことや、複数のキャリアを並行して働くことが当たり前となっていきます。

今後は、1つの分野の仕事で食べていくというキャリアプランはリスクが高くなり、キャリアの糧となる知識やスキルを幅広く習得していくことが求められます。

老後の暮らし方

総務省の労働力調査によると、2021年10月時点において、65歳以上の就業者は907万人となり、20年前、2001年の同月と比較し1.9倍となっています。
2021年9月時点での65歳以上の人口は3640万人ですので、既に日本の65歳以上の1/4が働いているということになります。

また、日本の高齢者の総人口に占める割合は29.1%となり、世界で最高の割合です。
超高齢社会を迎え、平均寿命が80歳を超えている日本では、少子高齢化による労働力不足を補うために、一層の高齢者雇用促進が求められています。

つまり、60歳または65歳の定年後に、退職金と年金で余生を送るという老後の暮らしから、年齢に関わりなく働き続けられる「エイジレス社会」の中での生活に大きく変わるということです。

現在、高齢者の就業促進の施策として、健康づくりやフレイル対策を行いつつ、シルバー人材センターやボランティアなど、高齢者のニーズに応じた多様な就労機会を提供することなどが進められています。

人生で得た知見を活かし、必要であれば新しい知識やスキルを習得し、高齢者もフレキシブルな働き方に対応していく必要があります。

企業や働き方はどう変わっていくか?

働く期間の長期化

100歳まで生きるというのは、老後を趣味だけで過ごすには長すぎる期間であり、70代・80代まで働くことを視野に入れる必要が出てきます。

しかし、働き通しの人生を歓迎しない人も当然存在するでしょう。

だからこそ、常に自分を見つめ直すことが重要であり、働き方そのものを変える必要があるのです。

人生について考えを深め、どのタイミングでどのようなスキルを身につけ、どのようなワークスタイルで生きていくのか?企業で働くだけでなく、起業をする、または、仕事から離れ、ボランティア活動や地域活動で社会貢献するという選択もあります。


人生設計を考えるということが、100年時代を生きるために大事な思考となるのです。

働き方の多様化

人生100年時代は、イノベーションを伴う働き方の時代へと突入します。

少ない人口で生産性を向上させることはもちろんのこと、労働者のライフステージにコミットした働き方が重要視されてきます。

一億総活躍社会とも言われていますが、女性や高齢者の積極的な雇用と労働、短時間労働でも価値創造ができること、人材の多様性が、日本の生産性を向上させるために不可欠なことです。

既に日本でも、新技術の導入による定型的業務の軽減、テレワークの普及による柔軟な働き方、フリーランスなど雇用関係によらない働き方などが始まっていますが、まだ導入段階であり、十分とは言えません。
ワークライフバランスを見直した柔軟性のある働き方が、女性や高齢者の労働参加に繋がると言えるでしょう。

しかし、新技術を活用した仕事やテレワーク、フリーランスとして対応できる仕事に対応するためには、相応のスキルが求められます。
働き方の多様化が進むためには、労働者個々のスキルアップが大前提となります。

企業の体制変化

企業が人生100年時代で成長していくためには、AIなどの最先端技術と従業員のキャリアについてのリテラシーを高めていくことが重要です。

特に従業員に対しては、キャリア自律の促進を行う必要があり、企業は「終身雇用で守る」から「従業員が社会で活躍し続けられるように支援することで守る」という変容が求められています。

また、人手不足によって生産性を落とさないためにも、ワークライフバランスの促進、テレワーク、短時間勤務を導入することで、育児や介護との両立が難しくなっている従業員をサポートし、活躍してもらうという環境づくりが大切になってきます。

従業員の生涯を通じた高付加価値労働を実現させるために、キャリア開発支援、多様なポジションの用意や従業員の意識改革などが必要であると言えます。

従業員にとっても、企業にとってもメリットの高い働き方の実現が課題となっています。

変化していく働き方にどのように対応すべきか?

キャリア形成について

就労する期間が長期化する一方で、AIやロボット技術の発展により業務の効率化が進み、一つひとつの仕事の期間は短くなることが想定されています。

同じ仕事だけを長年ずっと続けるということが難しくなることから、キャリア形成の重要性についてもクローズアップされるようになりました。

キャリア形成は「目標を掲げ、その目標達成に向けたプランを考えること」という概念が定着していますが、20歳の時点で80歳時の目標やゴールを掲げることは難しく、簡単にキャリアプランが立てられるというものではありません。
その時々の状況に合わせたキャリアの考え方を選択することが重要です。

副業・兼業について

人生100年時代において、複数のキャリアを並行した働き方も推奨される働き方の一つです。

従来、副業や兼業と言えば、生活費など金銭不足を補うために行うイメージでしたが、現在はキャリアに活かすための副業・兼業を選択する人が増えています。

副業を解禁した企業では、本業とは異なる「資格を活かした副業」「好きなことを活かした副業」などを選択する社員が多く、並行して異なるキャリアを積むことで相乗効果が生まれ、本業の成果も上がったという結果が出ています。

副業・兼業を行うことで、幅広い知識を蓄え、自分が持っている経験と合わせることで、大きな強みとして変化し、更なる活躍の場が広がる可能性があるのです。

しかしながら、副業・兼業については、同業他社への情報漏洩、労働時間管理についての懸念を示す企業が多く、依然として多くの企業で禁止されているのが実情です。
企業の成功例を基に、これらの課題への対応が求められます。

社会人の学び直しの必要性

人生100年時代はAIなどの導入が進む技術革新の時代であり、デジタルトランスフォーメーション(DX)化に適応するための知識のアップデートをはじめとし、自走して行動できる力や、柔軟な発想力など、新たな能力を獲得するための努力が求められます。

働く期間が大幅に延び、雇用環境の変化に対応するためには、社会人になってからも常に学び直しを行い、自分の市場価値を上げていくことが重要になってきます。

リカレント教育

リカレント教育とは、社会に出た以降も仕事に必要な知識・スキルを習得し、学習と仕事を交互に繰り返す再教育システムのことを言います。

人生100年時代の到来で、働く期間が長期化することが確実視されており、長く働くためにも、常に新しい知識やスキルを身につける必要が出てきたことで注目されている教育です。

就業経験のある社会人であれば年齢制限なく、いつでもリカレント教育を受けることができます。また、企業や誰かに指示されて学習するのではなく、本人が自主的に学習することが特徴となります。

働き方の多様化や、社会で求められる知識や能力の変化に対応するためにも、労働者個々が、常に学び直しをしていくという意識が大事になってきます。

リカレント教育についての施策(厚生労働省)

リスキリング

リスキリングとは、新しい職業に就くために、または現在の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを習得する・させることです。

リカレント教育の違いとしては、企業における人材戦略によって、従業員の大幅なスキルチェンジを行うために、企業が従業員に受けさせる教育という意味合いが強いことです。

デジタル技術を導入した業務内容が増えるなどの環境変化に対応することは、企業も労働者も生き残りに欠かせないこととなります。

従業員の能力やスキルを再開発する組織的な教育体制も、今後、社会人の学び直しとして求められることの一つとなっていくでしょう。

人生100年時代の働き方についての政府の取り組み

人生100年時代構想会議

人生100年時代構想会議とは、日本政府が人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現するための政策のグランドデザインに係る検討を行うために設置した会議です。

内閣総理大臣が議長となり、有識者を交え、「人づくり革命」を行うための様々な施策を検討しています。

一億総活躍社会実現のため、いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会の在り方を構想中です。

人生100年時代構想(首相官邸HP)

リカレント教育の拡充

リカレント教育が推奨され始めている反面、拡充に向けてまだ課題があるのが現状です。
課題点としては、

・学費の自己負担が大きい
・長時間労働により、学習のための時間が設けられない
・リカレント教育を受けられる教育機関やカリキュラムが少ない

などが挙げられます。
そして現在、日本の社会人のニーズに合わせた学びができるように、各省庁で施策を打ち出しています。

・厚生労働省…教育訓練給付金などの各種給付金制度
・経済産業省…IT・デジタル領域を中心としたリカレント教育の情報提供、各種資格試験の実施
・文部科学省…教育機関でのリカレント教育プログラム拡充支援

リカレント教育の拡充のためには、学費の補助や教育機関での多様なカリキュラムの準備がいち早く求められるほか、企業における中途採用の拡大など、学びを活かした働き方ができる場の提供も必要な案件となります。

高齢者雇用の促進

少子高齢化が進み、生産年齢人口(15歳~64歳)が減少している日本では、若手の新しい人材を確保することが難しくなってきました。
そこで、経験や知識が豊富な高齢者も働くことが望まれています。

また、内閣府が2013年に60歳以上の人に対して行った「高齢者の地域社会への傘下に関する意識調査」では、高齢者の7割弱が65歳を超えても働きたいと考えているとの結果が出ており、定年以降も長期間働きたい意欲のある高齢者が多いということが分かりました。

しかし、60歳定年以降の再雇用は、多くの企業で65歳までの雇用にとどまっており、65歳以降も働きたい希望者の雇用問題が浮上しています。

高齢者雇用の促進のためには、高齢者が年齢にかかわりなく働くことができる企業の拡大および高齢者再就職支援の充実・強化が重要です。

高年齢者雇用対策の概要(厚生労働省)

人生100年時代の課題

人手不足への対応

日本は少子高齢化により、人口全体に占める高齢者比率が高く、勤労世代の人数が少ない状況にあります。
既に、働き手が少ない=人手不足の深刻化が始まっています。
人手不足の解消や人材補填のために今後行っていくべきことの例として、

・テクノロジー新技術を導入し、業務プロセスを改善する
・人材育成のための投資
・労働条件や職場環境の改善
・女性や高齢者の積極雇用

などが挙げられます。
特に、労働者個々の働き方を受け入れられる労働条件や職場環境の改善については、女性や高齢者の雇用に繋がる面が大きいため、早急な対応が望まれています。

人口動態の変化と技術革新・グローバル化への対応

労働人口減少の中、日本経済が成長していくためには、様々な課題を解決していかなければなりません。

まず、AI・ロボット・ビッグデータなどの技術革新は、業務効率化に大きく貢献する反面、人間から機械へと仕事が代替されてしまう恐れがあります。

しかし、技術革新により新たに創出される仕事も多くあり、新しい仕事の雇用確保と労働移動が円滑に進められる体制を取ることが課題と言えます。

2つめに、グローバル化への対応が課題となってきます。

日本で働く外国人労働者は一層増加していく見込みであり、海外に活躍の場を求めていく日本人も増えることが想定されます。

グローバル化は技術革新に関連していることも多く、あらゆる業界で、海外との連携または競争による労働生産性が高まることが期待されています。

また、多様な労働者が流入する中で、労働市場における各種制度や適正賃金の考え方など、働き方の変化に合わせた対応が必要となってきます。

今後の日本経済の発展のためには、老若男女問わず、日本人全体の積極的な雇用と就労が欠かせません。社会全体として柔軟な労働環境を整備することが日本人が総活躍できる大きな一歩となります。

まとめ

人生100年時代は既にスタートしている

人生100年時代は「これからのこと」と捉えられがちですが、全てが既にスタートしていることであり、むしろ日本は対策に後れを取っていると言えます。

100年という長期間においてモチベーションを維持しながら生活するためには、経済的自立、健康、やりがいなど、多方面での改善・改革が必要です。

豊かに満たされた生活を送るためにも、一人ひとりが時代の変化に対応していくという意識を持つことが、何よりも大切なことと言えるのではないでしょうか。

【コラムを書いた人】
西村 美保
パセリスタッフ専属コーディネーター。コーディネーター歴6年。
様々な職種において転職希望の求職者をサポート。他にもスクールにおいてセミナー活動を行い、転職や就業に関する情報収集の仕方や良い転職を行う方法を伝授している